一般的には、シーケンサー(Sequencer)と呼ばれますが、「シーケンサー」は三菱電機の登録商標です。
ウォークマンがソニーの登録商標で、他社はヘッドホンステレオと呼ぶように、正式には「PLC」と呼びます。(実際には現場では、ウォークマン同様に他社の「PLC」も「シーケンサー」と呼ばれる事が多いです。)
FAの現場に携わっていない方は、機械の制御はマイコンやパソコンで行っていると思っている方が多いのですが、実際にはマシン制御そのものはPLCで行っている事が非常に多いのです。
(NC装置や生産管理指示システムはパソコンが幅をきかせていますが)
PLCは、マイコンやパソコン(以下、パソコンと統一します)と全く異なる方式で制御されます。
パソコンのプログラムを組まれた方はご存知かと思いますが、パソコンのプログラムはプログラム・カウンタで制御されています。(アセンブラをご存知の方なら、PCレジスタという言葉を知っておられると思います)
「プログラムを上から順に実行して、条件によって分岐していく」といった処理になります。
(最近のCPUは多段パイプラインを採用して、先読みをしていますが基本は同じです)
それに対して、PLCはプログラム・カウンタ方式とは全く異なる、ストアード・サイクリック・スキャン方式で実行されます。
これはもともとは、昔のリレーシーケンス制御からきている方式で、メカトロニクスの創生期には、まだマイコンの技術者が少なく、リレー制御の技術者が大半でした。
その後複雑化する一方の機械制御で、電気部品であるリレーを大量に使用するため、制御盤の小型化が難しいのと、基本的に消耗品であるリレーの故障などメンテナンス面で問題が発生していました。
電子回路化もいろいろと検討されましたが、専用基板などでICなどが故障すれば現場の作業者が修理するのは非常に難しく、汎用マイコン化が要求されていました。しかしマイコン技術者が当時は、あまりにも不足していました。それでリレーシーケンス回路をそのまま書けるマイコン「PLC」が登場しました。従来のリレー回路設計者がそのまま、機械制御のソフトウェアを作れるようになったのです。
ソフトもパソコンのようないわゆる言語で書くのではなく、リレー回路をそのまま記述していきます。
そして、そのプログラムは「全ての行が同時に実行」されます。実際にはプログラムを上から順に回路をスキャンして、条件が成立していればその回路はONとなります。一番下までスキャンした後、また1番上の回路からスキャンを続けます(これがサイクリック・スキャンの意味です)順番にスキャンするだけなので、分岐やジャンプ、条件成立まで待機といった概念がありません。(できないわけではないのですが)
これが何を意味するかと言えば、
という事になります。機械はステーションと呼ばれる複数の工程を持っているのが普通です。そのため、マルチタスクが当然必要となるのですが、当時のマイコンは速度が遅く、まともにマルチタスクはできなかったため、こういう手段が生み出されました。
この「PLC」は過渡的なもので、いずれ「マイコン」「パソコン」の技術者が育ってくれば、使われなくなるとの観測も当時あったのですが、この分野は独自の発展を遂げ、システムの安定性、耐環境性(外来ノイズや温度、湿度、空気雰囲気等)に優れたものが生産されています。その後、安定性や耐環境性に優れたFA用パソコンも登場したのですが、PLCの普及の方がはやく、ディファクト・スタンダードになっています。パソコンもMS−DOSの時代はOSも安定していましたが、Windowsの登場で、システムが大きくなりすぎ、フリーズ等がよく問題となっています。余計な機能の無い「PLC」は非常に安定して動作し、安心して使えるということで、
特に耐ノイズ性は頑強で携帯電話どころか、すぐそばで溶接機や無線機を使っても、誤動作もせず平気で稼動しつづけます。(メーカー保証ではありませんが)第一、溶接機のアーク放電程度の電磁波や電波ノイズで誤動作するのでは、溶接ロボットなど作れません。工場はインバーターや溶接機などノイズ源のかたまりなのですから
※MS−DOSおよびWindowsはマイクロソフト社の登録商標です。
2001/04/22